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大阪高等裁判所 昭和31年(ラ)273号 決定

抗告人 下山冨美子(仮名)

主文

原審判を取消す。

抗告人の名「冨美子」を「十美代」と変更することを許可する。

理由

抗告人は主文同旨の裁判を求め、その理由は別紙記載のとおりである。

よつて、案ずるに、本件記録中の疏第一号乃至第四号(戸籍謄本二通及び○○市長の住所証明書二通)と抗告人審訊の結果によると、抗告人下山冨美子は昭和三十一年十月○○日肩書地に住所を有する下山正(昭和三年九月○日生)と婚姻の届出をし爾来同所に同居しているのであるが、近隣に抗告人と同姓同名の人妻が居住し且その年輩も略同じいので抗告人宛の郵便物その他通知書等が誤つで配達されることが住々あるし、その他日常の生活に云い知れぬ支障を感じており、そのため抗告人並に家族においてその名「冨美子」を「十美代」と変更することを希望していることが認められ、現に「十美代」の字は当用漢字であるので、以上の事実は戸籍法第一〇七条第二項にいわゆる名の変更について正当の事由ある場合に該当し本件申立を却下した原審判に対する本件抗告はその理由がある。よつて、家事審判規則第一九条第二項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長判事 田中正雄 判事 松本昌三 判事 山崎薫)

(別紙)

抗告の理由

一、抗告人は神戸家庭裁判所龍野支部に対し申立人の名は「冨美子」であるが昭和参拾壱年拾月○○日申立外下山正と婚姻したところその近隣に申立人と同姓同名の者があり年も大差なく申立人が事実上申立外正と同居中より郵便物その他の通知書の誤配がしばしばあり双方共非常に迷惑し将来どのような間違が起るかも知れず申立人の生活上言い知れぬ差支があるのでその名を「十美代」と変更することを許可する旨の審判を求めたるところ同裁判所は昭和参拾壱年拾月貳拾参日申立を却下する旨の審判を受け同月貳拾参日右申立却下を知つたのであります。

二、右神戸家庭裁判所龍野支部の申立却下の理由は「十美代」を「トウミヨ」と読むことはむつかしく本件申立は正当の事由によるものと認め難いと云ふのであるが「十美代」を「トウミヨ」と読むことは音訓読みにて「トウミヨ」と読むことが出来るばかりでなく戸籍取扱に関する民事局の趣旨からみても「十美代」なる名を用いることは何等制限はしていないと思ひますので本件抗告人の名を「十美代」と改名することの許可申立に対し原裁判所が「十美代」を「トウミヨ」と読むことはむつかしいとの理由を以て却下の審判に対し抗告人は不服でありますので前記抗告の趣旨記載の通りの御決定を求めるために茲に本抗告を為す次第であります。

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